東京高等裁判所 昭和40年(ラ)627号 決定
記録によれば、抗告人(債権者)・相手方(債務者)間の東京地方裁判所昭和三九年(モ)第一八、四八三号仮処分異議申立事件について、同裁判所が昭和四〇年五月一九日、先にした仮処分決定(同庁昭和三九年(ヨ)第八、六五三号工事禁止等仮処分申請事件)を取り消す旨の仮執行宣言付き判決を言い渡したこと、そこで、相手方は、右判決に基づいて、先になされた仮処分決定中、原決定添付の別紙目録記載の階段に対する相手方の占有を解いて抗告人の委任する執行吏の保管に付し、右執行吏の保管にかかることを公示すべき旨を命じた部分の執行を取り消すべく、同月二〇日東京地方裁判所執行吏に委任して右仮処分決定の執行取消の執行をし、かくて執行吏の占有を解かれた右階段の引渡を受けた(右仮処分決定の執行に際し現場に施された公示書は、これを除去するまでもなく、既に風雨のため紛失していた)ものであることが認められる。
抗告人は、右取消の執行手続は、民事訴訟法第五三七条の規定に違反するもので無効であるから、その執行はまだ終了していないと主張する。しかしながら、右認定のように、階段に対する執行吏の占有を解いてこれを相手方に引き渡し、しかも公示書が既に残存していなかつた以上、本件取消の執行手続は、抗告人主張の違法の有無およびその程度いかんを問わず、右事実的執行処分の完了によつて終了したものといわなければならない。したがつて、抗告人としては、もはや存在しなくなつた右取消の執行処分につき、執行方法の異議を申し立てて執行法上の救済を求める余地はないというべく、本件異議の申立は、不適法として却下を免れない。
(近藤 浅賀 佐藤)